ポピュリズムとは何か

書評というよりメモ書きみたいなものです。これからこういうのをちょくちょくやれたら良いなと思います

 

近年ちょっとしたブームにもなってるポピュリズムEU脱退を巡るイギリスさんのドンチャン騒ぎとか、米国のTwitter大好き大統領とか、或いは日本の大阪の元知事のアイツとか、ポピュリストと呼ばれる人らが最近多いですね〜と。じゃあそもそもポピュリズムって何なの?どんな特性なの?地域毎に時代毎に違いってあるの?どんな短所と長所があるの?そんな事について幅広く書かれています。

構成は そもそもポピュリズムとは何かに始まり、最初のアメリカのポピュリズム政党の事例ラテンアメリカの事例、フランス/ベルギー/デンマーク/オランダ/スイス/ドイツ/イギリスなどヨーロッパ各国のポピュリズム運動の事例、そして近年のツイッターおじさんなどこれからの展望という感じです。全体として具体的な事例が多くて、また各国の政治制度や主な政党の性質なども知れて政治知識が乏しい僕でもスイスイ読めました。

 

ポピュリズムとは要は「市民感情を多大に煽って人気取りをする政治スタイル」と言えます。他にも勿論たくさんの定義がありますが、だいたいどのポピュリズムも根底ではこの感じです。

 

ポピュリズムとは何かに対する定義、というかポピュリズムをどういう側面から捉えるかってのは主に二通り

一つは広く大衆に訴えるようなPR活動を行い「人気取り」の方法に注目した捉え方

そしてもう一つはエリート層や既成政党などへの批判を行うポピュリズム政党の政治運動に注目した捉え方

恐らく前者に関しては非常に分かりやすく、B級メディアやネット記事などで語られるポピュリズムはこれが大半だと思います。時にポピュリスト政党は党の「カリスマ指導者」とセットで捉えられがちです。歯に衣着せぬ物言い、斬新なスタイル、分かりやすく平易な言葉で広く民衆が理解できる物言い、そして時には排外主義的な過激発言で物議を醸すスタイル。だいたいそんなのがカリスマ指導者のイメージではないでしょうか。代表格で言うとオランダのピム・フォルタインやアルゼンチンのペロンですね。

もちろん前者と後者はあくまで「どう捉えるか」の話なので大きな違いはありませんが、後者のスタンスで行くとそれぞれの国や時代について個別具体的に論じなければならないので非常にめんどくさいです。前者は分かりやすいシーンをすっぱ抜いて「ポピュリズムやっべーぞ!」って言っとけばいいですから。ちなみに本書はもちろん後者のスタンスです。

 

さて、それではまずラテンアメリカについて。ラテンアメリカポピュリズムは「左派ポピュリズム」に分類されます。南米諸国では農業が国のメイン産業です。その為に国民の大半は貧しく、しかもその貧しい中でも地主と小作農/零細農家という対立構造が生まれています。更には欧州からの元移民である白人知識階級が国内のホワイトカラー職を総ナメします。その結果まぁ分かりやすいぐらいに後進国特有のはっきりとした社会的格差が生まれます。

 

それではこういったモデルの国で起こるポピュリズムはどういう性質か?物凄く分かりやすいです。要するに「所得格差無くせよバーカ」って感じです。ラテンアメリカの既成政党、つまりポピュリズム政権が台頭するまでに権力を持っていた政党の土台は何かと言うと、分かりやすい既得権益というマネーの力です。ホワイトカラーブルジョワジーやら地主やらと密接に繋がり、当然政策の方向性は社会の上位1%未満の彼らの為に仕向けられたものです。

 

ポピュリズム政党が如何にして成り上がるか。大抵の場合は彼らは「目に見える敵」を用意します。「目に見える敵」は様々で、まずは既成政党(橋本知事が「どの政党もうんち!」みたいなこと言ってたように)、その次に欧州の例で言うとイスラム教徒、日本の事例で言うと生活保護者や社会保障制度を使う在日外国人などです。そうした「目に見える敵」を想定し、民衆に対して「あいつらウザいよね?あいつらと俺らが違うの分かるよね?俺ら応援してよ」と問いかけます。これの何がエグいって、既成政党が腐ってれば腐ってるほど「あいつらとは違う俺ら」を演出できるので、ポピュリズム政党のブーストが容易になります。

 

ポピュリズム政権というものは大抵の場合ポッと出のペーペーの、マネーの力をほぼ持たない集団です。そういった集団はこうした既得権益と結び付けていないので、「貧しい奴らに金渡せやゴラァ!」と言うことが非常に容易になります。アルゼンチンで起こったポピュリズム運動もこの例に漏れず、カリスマのルペンさんもこの方針で成り上がります。大衆は大衆で「金くれやオラァン?」という考えなので、ポピュリズム政党はこうした市民感情を多大に利用して自身の政党のブーストが出来やすいです。ラテンアメリカ諸国は先述した社会情勢によりポピュリズムが発展しやすい土壌を多大に兼ね備えた地域と言うことができ、現在でも「ポピュリズム発祥の地」と言われたりしています。

こうした国のポピュリズムの特性をもう一度まとめると「所得の再分配」「特権階級/エリート批判」が主です。国民の大半を占める農業従事者は、要は自分達の土地があって日々それなりに生きていけたら良いわけで、あまり小難しい事は求めません。それよりかは「目に見える分かりやすい敵=エリート階級」に対して「あいつ死なねぇかな」とシンプルな感情を持っていて、ポピュリズム政党は当然これに対してアプローチ(人気取り)します。

 

ラテンアメリカの左派ポピュリズムについてはこの辺で。欧州についてはまた今度書きます(ほんまか?)